医誠会国際総合病院 循環器内科特設サイト 大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症
大動脈弁狭窄症とは?

大動脈弁狭窄症(AS)とは、心臓の左心室と大動脈を隔てている弁(大動脈弁)の動きが悪くなり、全身に血液を送り出しにくくなる状態のことです。さまざまな原因により大動脈弁狭窄症は起こりますが、加齢や動脈硬化による原因が近年増えてきています。
歩いたり、階段をのぼったりすると、息切れ・動悸・疲労感・胸の痛み・めまい・意識を失う(失神)などの症状が出現する事があります。足のむくみや息切れの症状を伴う心不全の原因となる事もあります。重症になると失神や心不全を起こされ、心不全の悪化や不整脈の出現で突然死されることもあります。
65歳以上のAS患者さんは全人口の3%程度(約380万人)がこの疾患をもっていると推測されており、まれな疾患ではありません。
TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)とは?

大動脈弁狭窄症は症状が悪化すると、突然死の危険性が高い病気です。
以前の治療法では開胸する外科的手術(外科的大動脈弁置換術(SAVR))しかありませんでしたが、ご高齢の患者さんや基礎疾患があり外科的手術を行う体力がない患者さんを対象にした治療法として開発されたのが経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)です。日本では2013年10月に保険診療の承認が得られた比較的新しい治療法ではありますが、現在では日本で年間1万件以上に施行されています(2024年:14866件/年)。
TAVIは大動脈弁にカテーテルという細い管を用いて、人工の弁に置き換える治療法です。アプローチは主に足の付け根の動脈から(経大腿アプローチ)が基本的なアプローチで体に負担の少ない選択肢ですが、血管の状態によっては適さない場合があります。その際には、首の動脈(頚動脈アプローチ)や鎖骨の下の動脈(鎖骨下動脈アプローチ)、直接大動脈アプローチ・経心尖アプローチなどの選択をする場合もあります。
TAVI(経カテーテル大動脈弁留置術)のメリットは?
体への侵襲(負担)が少ない
外科的大動脈弁置換術(SAVR)では必要となる胸骨切開、心臓停止、大動脈切開、人工心肺といった手技を必要としない為、心臓への負担、出血量を減らす、術後の疼痛の軽減が期待できます。
入院期間の短縮
体への侵襲(負担)が減らせることで、術後早期のリハビリが可能となり、より早期の退院が期待できます。
従来であれば治療できなかった患者さんへの新たな治療選択肢
これまでであれば年齢や体力、他臓器の基礎疾患(心臓、肺、肝臓)などの理由で従来の外科的手術が受けられなかった患者さんでも、治療が受けられる可能性があります。
対象患者さんは?

弁膜症治療のガイドライン(2020年改訂版)では、TAVIと外科的大動脈弁置換術(SAVR)の明確の年齢基準は設定されていませんが、優先的に考慮するお目安として80歳以上はTAVI、75歳未満はSAVRとされています。
但し年齢だけでなく、全身状態や解剖学的な要件もふまえて、ハートチームで治療選択肢を検討して参ります。