心房細動など脈が速くなる不整脈

心房細動とは

心房細動(AF)とは
  • 心臓の中に血栓(固まった血の塊)ができてしまい、血栓が動脈を詰まらせてしまう、血栓塞栓症を引き起こします。特に心房細動が原因の脳梗塞になると約40%の方が社会復帰できない、寝たきり状態などになってしまいます。
  • 脈が不規則で乱れるため心臓(特に心房)が変形して心臓の機能が低下し、心不全が徐々に進行します。容易に肺へ血液が逆流してしまうため息切れしやすくなり、変形が進むと弁膜症も生じてきてしまいます。

心房細動の症状

動悸・息切れ・胸の不快感・めまい・失神などの症状が現れます。
一方で、日頃は無症状の人もいます(約3~4割は自覚症状が乏しい)

心房細動の症状

心房細動を放置すると…

心房細動は、放置すると脳梗塞や心不全などの命にかかわる合併症を引き起こす可能性が高まります。

心房細動を放置すると

心房細動の種類

発作性心房細動
1週間以内に治るもの
持続性心房細動
心房細動の状態が持続している
(1年以内)
長期持続性心房細動
心房細動の状態が持続している
(1年以上)

心房細動の病態

心房細動は、洞結節(本物の社長)が「偽社長」に乗っ取られてしまう病気です。社長は 60 ~ 80 回 / 分の電気を送りますが偽社長は 400 回~ 600 回 / 分の電気を送るため、脈が乱れて早くなってしまいます。

たちの悪いことに偽社長は肺静脈~左心房に『巣』を作り、癌細胞のように増殖・転移していきます。
右心房や本物の社長の側に転移することも多いです。

心房細動の病態

心房が震えているだけの状態なので心房の中で血液がうっ滞して血栓ができたり、心房に血流がとどまりやすくなり徐々に心房が変形(拡大)していきます。
心房が拡大することで逆流防止弁の閉まりが悪くなり、弁の逆流が始まります。(弁膜症)

偽社長が生じる原因は、高血圧や脂質異常症、糖尿病などの生活習慣病や睡眠時無呼吸症候群、飲酒に伴うアルコール摂取過多、甲状腺の病気、加齢、遺伝の関与が指摘されています。

心房細動の病態2

抗凝固薬

抗凝固薬

震える心房の中で血液はうっ滞し、血栓ができてしまいます。血栓を溶かしたり、できにくくする血液をサラサラにする抗凝固薬は脳梗塞などの血栓塞栓症予防に必須の薬です。

後述するカテーテルアブレーションで治療したとしても抗凝固薬は中止できる人もいますが、継続が望ましい人が半数以上です。(出血があったり手術を受ける場合は休薬可能)

生活習慣病の治療

生活習慣病の治療

心不全のステージはA(初期)~D(末期)に分類されています。

心不全ステージは残念ながら進行性で元に戻ることはありません(心不全ステージB→A、C→Bにはならない)。高血圧や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病は心不全ステージAに分類され、心房細動は心不全ステージBに分類されます。

心房細動の病態2

抗不整脈薬

抗不整脈薬

偽社長の動きを抑え、社長を目覚めさせる薬です。しかし抗偽社長の増殖を止めることはできないため、徐々に薬の効果は乏しくなります。

アブレーション

アブレーション=焼灼

偽社長が自然に消えることはないため、カテーテルで偽社長の周囲を檻の ように焼灼し偽社長を檻に閉じ込めてしまう治療法です。

2000年ごろから始まった治療ですが心房は薄いため昔は心房に穴が開く等、重篤な合併症が非常に多かったためあまり普及しませんでした。2010年ごろからアブレーションカテーテルや医療機器の改良が進み日本では安全な治療法として2018年以降ガイドラインで治療選択肢として推奨されるようになりました。

カテーテルアブレーションにより社長は偽社長に邪魔されず、心房の動きも正常に機能するようになります。それに伴って心臓の変形が止まって心臓が元の形に戻ったり、弁膜症を生じてしまっていても改善したりする効果、心不全を改善させる効果が様々な研究で報告され、認められています。

アブレーション